なつのおと
風鈴と夏氷
日本茶を楽しむ | 2021/07/29
カランコロン……涼やかな冷茶グラスに揺れる氷。チリン……夏風になびく風鈴の音。日本人は暑さを一瞬で和らげる音で涼をとり、心地よく暮らす工夫をしてきました。冷茶が恋しい季節の日本茶時間。そんな?夏の音”と一緒に涼みませんか?
「ほっとひと息時間」に
涼を運ぶ音色を添えて
日々の暮らしにとけこみ、四季折々の味わい方が愉しめる日本茶。日常にそっと寄り添ってくれる、そんな日本茶時間も、Teawareをほんの少しこだわるだけで、なんだか特別な時間を過ごしているような贅沢な気分に。気の利いたおもてなしにもなります。
暑い時季にぴったりの日本茶の淹れ方はやはり、すっきりとした旨みが魅力の水出し緑茶。茶器は水玉や波など、爽やかな絵柄が入った冷茶グラスがおすすめです。透明感のある乳白色は、水出しならではの美しい色合いと好相性。小ぶりなサイズのグラスなら、酢の物や前菜の小鉢としても重宝します。
お供の茶菓子は、繊細でしなやかな竹細工の籠に盛れば見た目も涼やか。菓子器以外の使い方も豊富で、花を生けたグラスを入れたりと、小さな工夫で暮らしを愉しむことができます。
さらに、耳で涼をとる演出を加えてみてはいかがでしょうか。夏の風物詩のひとつである風鈴です。チリン、チリーンという軽やかな響きは風を連想させ、一説によると体温を下げる効果もあるのだそう。古くから親しまれてきただけあってノスタルジックな情緒があり、くつろぎの時間をいっそう豊かなものにしてくれます。
明治大正時代に盛んに使われていた日本独特の技法でつくられる乳白色の文様のグラス。冷茶とのコントラストや揺らぐ氷も涼やかに
大正浪漫 冷茶グラスシリーズ / いい日になりますように ▼
「五十鈴」と名付けられた、ふっくらとした愛らしいシルエット。菓子器としてだけでなく、グラスに花を添えて花器としても
駿河竹千筋細工 小物入れ 五十鈴 / いい日になりますように ▼
おりんの澄んだ響きに
心が和む「置き風りん」
夏の風物詩「風鈴」。軒先で夏風に揺れる姿が目に浮かびます。
今回ご紹介するのは現代の生活様式で取り入れやすいスタンド型の「置き風鈴」。リビング、お庭、書斎など、好きなところに持ち運べます。
なかでも音色が美しく、デザインも洗練されている置き風鈴として人気なのが山口久乗の『かざりん』。山口久乗は鋳物の産地として知られる富山県高岡市で110余年の歴史を誇る、神仏具、美術銅器の老舗です。
『かざりん』の鈴は仏具のおりんなので、正しくは風鈴というより「風りん」。お寺の軒に吊るされている風鐸と同じ銅合金製で、鳴りをよくする「鳴りがね」という配合でつくられています。
伝統的な本物のおりんが奏でるやさしく上品な響きに耳を傾ければ、暑さもすうっと吹き飛んでいきそうです。
『かざりん』は職人が手仕事で削り、磨き上げる伝統的なおりん。透明感のある清らかな音色が特徴です
お部屋にひとつ欲しくなる
人気デザイナーが手がけた洗練デザイン
どんなインテリアにも馴染むモダンなデザインも『かざりん』の魅力です。
プロダクトデザイナー・磯野梨影氏とグラフィックデザイナー・スワミヤ氏がコラボレーションしたデザインは、スタイリッシュなフォルムと繊細なカットの短冊が印象的。インテリアの洒落たアクセントになり、気軽にお部屋に迎えたくなるアイテムです。
繊細でスマートなたたずまいの『かざりん』。乳白パールの短冊は揺れるとかすかにきらめきます
左から:かざりん 青銅・黄銅 / いい日になりますように ▼
風鈴の歴史は古代中国にさかのぼります。平安~鎌倉時代の日本では貴族が魔除けとして屋敷の軒に吊るしていたのだそう。その昔、平穏無事な幸せへの願いが込められていた風鈴のストーリーに思いを馳せ、五感で涼をとる日本茶時間を愉しんでみませんか?
構成・文/アトリエあふろ 富成深雪