一年に一度のご褒美を
この時期だけの贅沢 -新茶-
日本茶を楽しむ | 2021/06/30
今年も、待ちに待った新茶の季節になりました。
やさしい味わい、清々しい香り、爽やかなのど越し、
茶農家の方々の想いが詰まった、いまだけ限定のご褒美です。
初夏の旬の味わいを愉しめる
新茶って、どんな日本茶?
日本茶の生葉は、チャノキ(ツバキ科)という木の葉です。毎年、最初に成長した葉を「新芽」と呼び、その新芽を摘んで淹れた煎茶が「新茶」です。チャノキにとって厳しい冬を越え、春になって芽吹く葉は栄養分をしっかりと蓄えています。昔は、滋養強壮や体力回復のために飲まれていたことから、「新茶を飲めば、1年間病気をしない」とか、「新茶は長寿につながる」とも言われているくらいです。
そんな新茶の収穫時期は、全国有数の茶所・静岡県では4月25日~5月10日が新芽を摘む期間。春から初夏にかけて出まわりますので、新茶の旬はこの時期といえます。
針のように細くピンと張った形、鮮やかな色合いの上質な茶葉。新茶の清々しい香りとやさしい味わいを愉しんで
茶農家からの特別な贈り物
新茶づくりは秋からスタート
新芽を育てるための準備は、前年の秋から始まります。
翌年の新茶に古い葉が混ざらないように余分な枝や葉を丁寧に刈り取り、寒い冬には木の根元を温めるために藁を敷くなど丹精込めて育てていきます。春を迎えると、鹿児島などの温暖な地域から新芽の摘み取りが始まります。摘み取られた生葉は、酸化酵素の働きによって、すぐに発酵が始まりますので、できるかぎりスピーディに新鮮な状態で熱処理(蒸し)を施すことで発酵を抑え、乾物状態(荒茶)にします。この荒茶に仕上げ加工を施して、商品としての新茶ができあがります。
摘み取られたばかりの新芽は、みずみずしく生命力にあふれています
冬にじっくり蓄えられる栄養
新茶が美味しい理由は、
そこにあります
寒い冬の間に育つため日光をあまり浴びていない新茶の葉はやわらかく、みずみずしいのが特徴です。旨みと甘味の主成分であるテアニンをはじめ、冬の間にじっくりと蓄えられた栄養分が豊富。カフェインやカテキンなど日光によって活性化する成分は少なめなので渋味が少なく、それこそが新茶ならではの、清々しい香りやさわやかな美味しさの秘密となっています。茶摘みは年に4回程おこなわれ、その都度つくられる二番茶・三番茶などに比べても、新茶は一番品質がよいと言われています。
秋から約半年かけて丁寧に育てられる新茶に込められた、茶農家の方々の特別な想いを、ぜひ味わってみてはいかがでしょうか?
浅蒸し煎茶独特のすんだ黄色の新茶。お気に入りの常滑急須で淹れるまろやかな味わいが、なにげない休日を特別な1日に
常滑焼 黒泥朱巻文急須 玲光作・駿河竹千筋細工 一文字盆 / いい日になりますように ▼
写真協力/静岡両河内 豊好園
構成・文/アトリエあふろ 合屋順久